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Introduction

近年、大量な塩基配列を短時間で決定する次世代シークエンス機器が開発され、比較的容易にゲノム配列を決定できる時代に突入しました。それと並行して、RNAの発現領域を同定するトランスクリプトーム解析、さらに質量分析機を利用したタンパク質を網羅的に同定するプロテオーム解析および代謝産物を網羅的に同定するメタボローム解析など様々なゲノムレベルのデータ(オミックスデータ)を作成することも容易になってきました。今後の研究の目標は、これらを効率的に利用し、様々な形質・形態に関係する遺伝子を情報解析から推定し、実験的に遺伝子機能を明らかにする方法を開発することです。

1.種内の多様性を利用

様々な形質・形態に関係する遺伝子を同定するためには、対象となる遺伝子以外はほとんど同じゲノムを持っていると解析が容易くなります。そこで、同じ生物種であり、生殖交配ができるにも関わらず、様々な地域で隔離して自生していることで、形態や形質に多様性を持つシロイヌナズナを利用します。様々な地域で自生しているシロイヌナズナの生態株のゲノム配列およびトランスクリプトームデータから、SNPおよび遺伝子発現プロファイルを構築し、異なる環境条件での適応に重要な遺伝子を推定する研究を推進します。既に、シロイヌナズナの地域情報が明らかである75の地域から採取されたシロイヌナズナの生態株を用いて、全遺伝子の発現量、約200種類の2次代謝産物の多様性および相対成長速度を定量しました。現在では、ゲノム関連解析を通じて、二次代謝産生合成や相対成長速度に関係する遺伝子を同定しました。同定された遺伝子の形質転換体を構築し、期待される表現型があらわられるかを再確認しています。今後は、シロイヌナズナに近縁な非モデル生物種であるハクサンハタザオおよびダイコンで、ドラフトゲノムを次世代シークエンスで構築し、共同研究者を通じて様々な地域で自生している生態株の形質情報(フェノーム)、代謝産物情報(メタボローム)およびゲノム情報(ゲノム配列、トランスクリプトーム)を獲得し、同様な方法で、非モデル生物種においても様々な形質に関係する遺伝子を同定していきたいと考えています。

2.短い遺伝子の機能解析

ゲノムを構築後に、遺伝子を同定する技術を向上させる研究も推進していきたいと思っています。既に推進している既知の遺伝子間隙に存在する短いコーディング遺伝子の研究を推進していく予定です。私は、植物のモデル生物種であるシロイヌナズナで、多数の短い遺伝子を新規に同定することに成功し、現在までに、過剰発現させると、形態形成の異常あるいはストレス(乾燥、高温、高塩)耐性を示す約100個の短い遺伝子を見出しています。これらの新規の短い遺伝子にコードされているペプチドの中には、ホルモン様の機能(細胞から分泌され細胞間のシグナル伝達を行い植物の生理活性に重要な役割)を示すものが存在することがわかっています。細胞外に分泌される遺伝子に着目し、その遺伝子がコードするペプチドを人工的に合成し、シロイヌナズナの植物体に投与すると過剰発現体と同様の生理活性を付加できることを明らかにしています。今後は、分泌型ペプチドがシグナル伝達を作動させるメカニズムを明らかにする予定です。

獲得した研究資金

  • 平成31−33年度 文部科学省、科研費・挑戦的研究(萌芽)、代表者(花田耕介)、「共生菌の感染を促進させる植物由来ペプチドの網羅的探索」、490万円
  • 平成31−32年度 JSPS、二国間交流事業(共同研究)、代表者(花田耕介)、「多様な植物共生菌による植物の生理活性変化の分子メカニズムの解明」、187万円
  • 平成31−32年度 文部科学省、科研費・新学術・公募研究、代表者(花田耕介)、「 日本栽培ダイコンの起源と進化」、800万円
  • 平成30−33年度 文部科学省、科研費・国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))、代表者(花田耕介)、「バナナの抗菌性ペプチドの網羅的探索」、1,390万円
  • 平成30年度 研究力強化事業、九州工業大学、代表者(花田耕介)、「植物に存在する新規ペプチドのバイオマテリアル化へ向けた基盤研究」、400万円
  • 平成30年度〜平成32年度 文部科学省、科研費・基盤研究(B)、代表者(花田耕介)、「新規に同定された短い遺伝子にコードされるホルモン様ペプチドの機能解析」、1,200万円
  • 平成30年 久留米リサーチパーク、福岡県バイオ製品開発研究事業、機能性食品開発を目指した植物増産技術の応用、代表者(花田耕介)、「機能性食品開発を目指した植物増産技術の応用」、450万円
  • 平成30年 トヨタ自動車、共同研究、「植物の新規ペプチドの機能探索」、800万円
  • 平成29年度 筑波大学遺伝子実験センターの共同研究事業、代表者(花田耕介)、「植物ホルモンのシグナル伝達を阻害するペプチド性遺伝子の機能解析」、30万円
  • 平成29年度 研究力強化事業、九州工業大学、代表者(花田耕介)、「植物に存在する新規ペプチドのバイオマテリアル化へ向けた基盤研究」、350万円
  • 平成29−30年度 旭硝子財団、自然科学系「研究奨励」、代表者(花田耕介)、「ゲノムのビックデータの情報解析と分子生物学的解析の融合による植物に存在する新規ペプチド性遺伝子の機能探索」、200万円
  • 平成29−31年度 文部科学省、科研費・基盤研究(B)、分担研究、代表者(彦坂幸喜)、「環境勾配における遺伝子流動は適応を阻害するか:最適化理論を用いたアプローチ」、60万円
  • 平成29年 久留米リサーチパーク、福岡県バイオ製品開発研究事業、機能性食品開発を目指した植物増産技術の応用、代表者(花田耕介)、「機能性食品開発を目指した植物増産技術の応用」、756万円
  • 平成29年 トヨタ自動車、共同研究、「植物の新規ペプチドの機能探索」、800万円
  • 平成29年度 筑波大学遺伝子実験センターの共同研究事業、代表者(花田耕介)、「植物ホルモンのシグナル伝達を阻害するペプチド性遺伝子の機能解析」、30万円
  • 平成28−29年度 住友財団、基礎科学研究助成、代表者(花田耕介)、「植物ホルモンとクロストークする新規ペプチドの役割」、160万円
  • 平成28−29年度 武田科学振興財団、ライフサイエンス研究奨励対象、代表者(花田耕介)、「植物の形態形成に関わる新規の短い遺伝子の探索」、200万円
  • 平成28年度 久留米リサーチパーク、福岡県新製品・新技術創出研究開発支援事業、可能性試験、代表者(花田耕介)、「博多万能ねぎの生長促進剤の開発」、100万円
  • 平成28年度 筑波大学遺伝子実験センターの共同研究事業、代表者(花田耕介)、「植物ホルモンのシグナル伝達を阻害するペプチド性遺伝子の機能解析」、30万円
  • 平成28年度 鳥取大学乾燥地研究地センターの共同研究事業、代表者(花田耕介)、「次世代シーケンスによるオオハマニンニクのマーカー作成」、60万円
  • 平成27年度−平成30年度 文部科学省、科研費・基盤研究(A)、分担研究、代表者(柘植尚志)、「感染植物アポプラストに分泌される植物−病原菌相互作用に関与するペプチド因子の同定」、1,200万円
  • 平成27年度−平成28年度、文部科学省、科研費・挑戦的萌芽研究、代表者(花田耕介)、「ホルモン様ペプチドのシグナル解明のための基盤研究」、300万円
  • 平成26年度〜平成27年度 東京農業大学共同研究課題、次世代シークエンス費用代表者(花田耕介)、「オオハマニンニクのトランスクリプトーム解析」、300万円
  • 平成26年度〜平成27年度 鳥取大学乾燥地研究地センターの共同研究事業、代表者(花田耕介)、「次世代シークンスを用いたオオハマニンニクのトランスクリプトーム解析」、50万円
  • 平成25年度〜平成28年度 科学技術人材育成費補助事業、テニュアトラック普及・定着事業(個人選抜型)、代表者(花田耕介)、5,600万円
  • 平成24年度〜平成26年度 文部科学省、科研費・若手研究(A)、代表者(花田耕介)、「シロイヌナズナ生体株間の二次代謝産物量をコントロールするncRNA遺伝子の役割」、2,000万円
  • 平成24年度 文部科学省、科研費・新学術領域研究、ゲノム支援、代表者(花田耕介)、「高二酸化炭素条件下で変動する遺伝子群とその進化起源」、次世代シークエンス費用 400万円
  • 平成24年度〜平成25年度 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(BRAIN)、技術シーズ開発型(若手枠)、代表者(花田耕介)、「インシリコ予測に基づいた植物の新規機能性低分子ペプチドの探索」(継続課題)、5,200万円
  • 平成23年度〜平成28年度 CREST、分担研究、代表者(彦坂 幸毅)、「将来の地球環境において最適な光合成・物質生産システムをもった強化植物の創出」、 3,500万円
  • 平成24年度〜平成25年度 文部科学省、科研費・新学術領域研究、代表者(花田耕介)、「高二酸化炭素条件下で変動する遺伝子群とその進化起源」、1,000万円
  • 平成23年度〜平成26年度 文部科学省、科研費・基盤研究(A)、分担研究、代表者(柘植 尚志)、「アルタナリア病原菌の植物寄生性を決定するCD染色体の進化的起源と成立機構」、400万円
  • 平成22年度〜平成23年度 文部科学省、科研費・新学術領域研究、代表者(花田耕介)、「高二酸化炭素条件下で変動する遺伝子群とその進化起源」、1,000万円
  • 平成22年度〜平成23年度 独立行政法人理化学研究所、横浜所長ファンド、若手による連携研究枠、代表者(花田耕介)、「シロイヌナズナ野生株間の塩基および遺伝子発現の多様性から同定される植物2次代謝産物合成に関係する遺伝子群」、 300万円
  • 平成21年度〜平成23年度 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構、技術シーズ開発型(若手枠)、代表者(花田耕介)、「インシリコ予測に基づいた植物の新規機能性低分子ペプチドの探索」、8,800万円
  • 国立遺伝学研究所共同研究(A)採択 代表者(花田耕介)「ハクサンハタザオとダイコンの次世代シークエンス解析」 2013年度 50万円(旅費のみ)
  • 短期滞在フェローシッププログラム (University of Evry)花田耕介(20/6/2012-20/7/2012), 35万円(滞在費)
  • 国立遺伝学研究所共同研究(A)採択 代表者(花田耕介)「ハクサンハタザオとダイコンの次世代シークエンス解析」 2012年度 50万円(旅費のみ)
  • 組織的な若手研究者等海外派遣プログラム「JSPS Special Travel Grant Award for Young Scientists」花田耕介 SMBE 2010 Lyon までの派遣費 40万円
  • 基礎生物学研究所 共同利用研究費(研究会「様々なゲノム情報を基にした植物進化の研究」) 代表者(花田耕介) 発表者の旅費 2009年3月20日開催 50万円(招待講演者の旅費)